障全協/相模原事件の本質を問い続けることを呼びかける~相模原障害者施設殺傷事件の死刑判決確定を受けて~

本日、2016年7月26日に起きた相模原障害者施設殺傷事件の植松聖被告に対する死刑判決が確定しました。
1月から17回に渡って開かれた公判においての争点は、主に刑事責任能力に絞られ、事件の本質に迫ることなく判決が確定したことに深く憂慮します。
公判の中で遺族のみなさんは、命を奪われた無念さを、どんなに尊い命であったかを切々と訴えてきました。しかし、その想いは植松被告の胸に最後まで届くことはなく、「重度障害者は不幸しかつくらない・生きる価値はない」という考えを改めることはありませんでした。
いま、多くの公人による障害者・高齢者・女性・LGBT等に対する差別偏見発言が後を絶たないだけでなく、その責任を厳しく問われることもありません。さらに、政府が自立自助・自己責任を強調し施策を進めていることと、彼の主張は通底しているのではないかと、強い危惧を抱いています。
こうした現状を見るとき、この事件を死刑判決で終わりというわけにはいきません。植松聖被告が犯行に至った個人的要因に留まらず、その背後にある「生産性のない人たちに価値はない」等の社会的な差別問題の影響などについても明らかにしていく必要があります。
私たちは、この凄惨な事件を通して、意識的か無意識的か、またその程度に関わらず、すべての人の中に「優生思想」的な考え方があること、そして、学びあい育ちあうことで「優生思想」を一歩一歩克服していかなければならないといことに気づかされました。
社会もまた、人権や尊厳を学びながら、「優生思想」を克服する努力を重ねてきた歴史があり、努力を怠ってはならない課題であることを、この機会に改めて確認することができました。
私たちは、相模原「津久井やまゆり園」殺傷事件を風化させず、19人の命を尊び、今なお苦しみ続けている当事者・家族・職員・関係者のみなさんに心をよせ、この事件の本質を問い続けていくことを、すべての方々に呼びかけます。

声明⇒2020年3月31日相模原事件判決確定に対する声明

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